スマホ・モーターからレアアースを回収する「掘らない採掘」の現実
はじめに
レアアース問題の解決策としてよく出てくるのが 都市鉱山 です。
これは「使用済み製品の中にある金属を回収して資源化する」考え方で、
- 使い終わったスマホ
- 家電
- EVモーター
- 工場設備の部品
などが“鉱山”になります。
ただ、ここで素朴な疑問が出ます。
都市鉱山って、本当に採算が合うの?
「理想論」で終わらない?
結論はこうです。
- 条件が揃えば採算は合う
- ただし、レアアース単体では成立しにくい
- ボトルネックは「技術」というより 回収・分離・品質 にある
今日はこの現実を、工程順に分解して見ます。
1. 都市鉱山が“夢がある”理由
都市鉱山には明確なメリットがあります。
- 新規採掘より環境負荷を下げやすい
- 国内で回せれば供給リスクを減らせる
- 既に市場に存在する資源を循環できる
ただし、ここには罠があります。
都市鉱山は「都市にあるから掘りやすい」のではなく、
散らばっていて、混ざっていて、規格がバラバラ
だから難しい。
2. 都市鉱山の工程は「採掘」ではなく「物流+分解」
都市鉱山のコストを決めるのは、化学プロセスより前にあります。
2-1. 回収(集める)
- 回収率が低いと話にならない
- 物流コストが重い
- 個人保管(スマホ)で市場に戻ってこない
ここは技術より 仕組み の勝負。
2-2. 選別(何がどれだけあるか判定)
回収物は混ざっています。
- 型番も世代も違う
- 中身が違う
- 価値のある部品も価値のない部品も混在
ここで必要なのは、
- 自動選別(画像・バーコード・X線など)
- 成分推定(分析)
- ロット管理
つまり センサーとデータ管理 が効いてきます。
3. ボトルネック①:分解(解体)のコスト
都市鉱山で最も現実的に重いのが 分解 です。
- 手作業:精度は高いが高コスト
- 自動化:安定させるのが難しい
- 破砕:安いが後工程が地獄になる
破砕が危ない理由
破砕すると、
- 有価金属が混ざる
- 樹脂・接着剤・コーティングが混入する
- 分離プロセスが複雑化する
結果として「後段の薬品コストと廃液処理」が増える。
ここが都市鉱山のジレンマです。
4. ボトルネック②:レアアースは“薄い”
金(Au)や銅(Cu)なら都市鉱山は比較的成立しやすい。
しかしレアアースは違います。
- 濃度が低い
- 回収対象が限定される(磁石など)
- 純度要求が厳しい
つまり、
レアアースだけを狙うと、回収コストが勝ちやすい
採算が合うのは、「磁石がまとまって取れる」など
濃度が上がる条件 が揃ったときです。
5. ボトルネック③:分離・精製は“技術で解決”できるが高い
レアアースの分離は本質的に難しいです。
- 溶媒抽出
- イオン交換
- 晶析
どれも可能ですが、問題は
- エネルギー
- 薬品
- 廃液処理
- 品質保証(分析)
これらを含めると、
プロセスは作れても、コストで負ける
が起きやすい。
6. 都市鉱山が採算に乗る条件
ここまでを踏まえると、成立条件はかなり明確です。
条件①:回収ロットが大きい
- 工場の廃棄ライン
- EVモーターの大規模回収
- 事業者が一括回収できる仕組み
条件②:分解・選別を標準化できる
- ばらつきを減らす
- 混合を減らす
- 工程を単純化する
条件③:レアアース“だけ”を狙わない
現実には、
- 銅
- アルミ
- 金
- 銀
- レアメタル
などを一緒に回収して、全体の収益で成立させます。
つまり都市鉱山は、
複数資源の“セット回収”ビジネス
になりやすい。
7. 日本的に強いポイント
日本が勝てる可能性が高いのは、ここです。
- 選別の精度(品質文化)
- 工程管理(ロット管理・トレーサビリティ)
- 分離技術の安定運用
- 廃液・環境対策の技術
要するに、
「きれいに回して、安定した品質で出す」
ここが日本の得意領域で、都市鉱山は相性が良い。
まとめ
都市鉱山は、夢物語ではありません。
ただし、
- 技術だけで解決しない
- 「回収」「分解」「品質」が勝負
- レアアース単体では厳しい
- でも条件が揃えば成立する
そして結局は、
設計(分解しやすい構造)×回収の仕組み×工程技術
この掛け算です。
これが、掘らない採掘=都市鉱山の「テクノロジーの裏側」です。


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