賢く見える正体は“覚える”ことではない
はじめに
AIについて語られるとき、必ず出てくる言葉があります。
- AIは学習する
- 学習済みモデル
- 学習させる
でも実は、この 「学習」 という言葉が、
AIを必要以上に神秘的にしています。
この記事では、
AIの学習と推論は、何がどう違うのか
を、技術として正確に整理します。
まず結論:学習と推論は「別の工程」
最初に結論です。
- 学習(Training): → AIを作る工程
- 推論(Inference): → AIを使う工程
この2つは、
やっている場所も、重さも、目的もまったく違います。
学習とは何をしているのか
学習とは、
正解に近づくように、計算式の係数(重み)を調整する作業
です。
学習の流れ(簡略)
- 入力データを与える
- 出力を出す
- 正解との差を計算
- その差が小さくなるように重みを修正
- これを何百万回も繰り返す
重要なのは、
- AIは理解していない
- 意味を把握していない
ただ 数字を最適化しているだけ という点。
なぜ学習は「重い」のか
学習が重い理由は明確です。
- 扱うデータ量が膨大
- 試行錯誤を何度も行う
- 同じ計算を何回も繰り返す
そのため学習は、
- 大量のGPU
- 大電力
- 長時間
を必要とします。
これが クラウドAI が主役になる理由です。
推論とは何をしているのか
推論は、学習とは真逆の性質を持ちます。
推論とは、
すでに決まった重みを使って、結果を計算するだけ
です。
推論の特徴
- 計算は一方向
- 試行錯誤しない
- 比較的軽い
だから、
- スマホ
- 家電
- 車載システム
でも実行できます。
なぜ「学習=成長」と誤解されるのか
人間の学習は、
- 体験を覚える
- 概念を理解する
- 応用する
ですが、AIの学習は違います。
AIは、
- 経験を覚えない
- 理解しない
- 意味を知らない
それでも賢く見える理由は、
統計的に正しそうな出力を選び続けるから
です。
学習と推論は「同時には行われない」
多くの人が誤解している点。
AIは使いながら学習していません。
- 学習:オフラインで実施
- 推論:実運用で実行
スマホのAIも、
- 裏で勝手に賢くなっている わけではありません。
アップデートで
学習済みモデルが入れ替わっているだけです。
なぜオンデバイスAIは推論だけなのか
端末AIが推論専用なのには理由があります。
- 学習は重すぎる
- 電池がもたない
- 熱が出る
だから、
- 学習 → クラウド
- 推論 → 端末
という役割分担が基本構造です。
これから起きている変化
最近は、
- 小規模学習
- 追加学習
- 微調整(Fine-tuning)
が端末側で行われるケースも出ています。
ただしこれは、
ゼロから学習しているわけではない
という点が重要です。
まとめ
AIにおける、
- 学習
- 推論
は、人間の感覚とはまったく違います。
- 学習=巨大な最適化作業
- 推論=決まった計算の実行
この違いを理解すると、
- なぜAIは重いのか
- なぜクラウドが必要か
- なぜ端末AIが増えているか
すべてが一本につながります。
次の記事では、
「じゃあ、その計算は誰がやっているのか?」
── CPU・GPU・NPU の役割分担を掘ります。


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