― パスワードの裏で動く、もうひとつのセキュリティ層 ―
■ はじめに
私たちは、Wi-Fiを「つながれば便利なもの」として使っています。
でも実際には、その“便利さ”の裏側で、
絶え間ないセキュリティの戦いが繰り広げられています。
スマホが自動でネットにつながる――
それは、見えないところで数学と暗号理論が通信を守っているからです。
今回は、Wi-Fiの暗号化がどのように働いているのかを、AIの視点でわかりやすく解説します。
1. Wi-Fi通信の危うさ ― “見えないから安全”ではない
Wi-Fiは電波を使って通信します。
つまり、空気中にデータが飛んでいるということ。
たとえば未暗号化のネットワーク(昔の「FREE Wi-Fi」など)では、
その通信内容を第三者が傍受して読むことができる状態にあります。
メール、パスワード、画像…すべてが見えてしまう危険。
これを防ぐために、Wi-Fiには最初から暗号化プロトコルが組み込まれています。
2. 暗号化の進化 ― WEPからWPA3へ
Wi-Fiのセキュリティは時代とともに進化してきました。
| 規格 | 導入年 | 特徴 | 現在の評価 |
|---|---|---|---|
| WEP | 1999年 | 最初期の暗号化。RC4方式を採用 | 脆弱で現在は使用禁止レベル |
| WPA | 2003年 | 一時的な改良。TKIP方式を導入 | 攻撃耐性が不十分 |
| WPA2 | 2004年 | AES暗号を採用し、高い安全性を実現 | 現在も広く使用 |
| WPA3 | 2018年 | SAEハンドシェイクでさらに強化 | 現在の最新・最強規格 |
現在の主流である WPA3 は、過去の弱点を克服し、
個人でも企業でも安心して使えるレベルの暗号強度を持っています。
3. 通信を守るカギ ― AES暗号とは?
WPA2以降で使われているのが、AES(Advanced Encryption Standard)という暗号方式。
これは、米国標準技術局(NIST)が採用した世界基準の暗号化アルゴリズムです。
AESは、
- データをブロックに分割
- 数学的な置換・転置(Substitution & Permutation)を何度も繰り返す
- それを秘密鍵で制御
…という構造を持ち、現代のコンピュータでも突破がほぼ不可能とされています。
たとえ通信を盗み見られても、
それは「ただのランダムな文字列」にしか見えません。
4. 鍵のやりとり ― “安全な握手”SAEプロトコル
暗号化が強力でも、「鍵の渡し方」が脆弱では意味がありません。
そこでWPA3では、新たに**SAE(Simultaneous Authentication of Equals)**という仕組みが導入されました。
これはお互いの端末が同時に認証を行う「双方向ハンドシェイク」。
従来のように「ルーターがパスワードを一方的に検証する」形ではなく、
お互いに暗号化された数学的“証明”を交換します。
この仕組みにより、**総当たり攻撃(ブルートフォース)**が極めて難しくなりました。
5. 公共Wi-Fiはなぜ危険なのか
カフェや空港などの「パスワードなしWi-Fi」は、
暗号化が行われていないことが多く、通信内容がそのまま飛び交っています。
このような環境で個人情報を送るのは、
ハガキで住所とメッセージを送るようなもの。
最近では「暗号化済み無料Wi-Fi(WPA3対応)」も増えていますが、
それでも不特定多数が同じネットワークを使うため、
VPNなどの追加のセキュリティ層を重ねるのが安心です。
■ まとめ:静かに働く“数学の防壁”
Wi-Fiの安全性は、目に見えません。
でもその裏では、暗号理論・数学・通信工学が常に動いています。
「見えないからこそ、安全でなければならない」
その思想のもとに、日々アップデートを重ねる技術者たちがいます。
次にWi-Fiにつながるとき、
その背後で働く“数学の職人たち”に思いを馳せてみてください。


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